コンデンサー充電器の製作

 電圧を上げるDCコンバーターは方式が幾つもあるが、用途が高圧電解コンデンサーの充電である場合、昇圧チョッパーがお薦めである。一部に高価なパーツが必要であるものの、構造が簡単で製作し易い。入手の難しいパーツを必要としない。何より高性能を実現し易い。

 

昇圧チョッパーの原理

 初期状態である。
 注意すべき点として、スイッチング素子がOFFであっても充電対象C1にバッテリー電圧が直接加わること。これは昇圧チョッパーの欠点であり、結果として非常に突入電流が大きい。

 もちろんコイルの存在により、短絡に比べれば突入電流は小さくなる。だが、インバーターに使用されるコイルのインダクタンスはそれほど大きくないので、人間的時間感覚では短絡と変わらない。

 スイッチング素子がONになると、バッテリーによりコイルに電流が流れる。
 インダクタンスが1ヘンリーの場合、1Vが加わると1秒ごとにコイル電流が1Aの割合で増大する。大抵のコイルは1マイクロヘンリーを単位としている。100μHのコイルに1Vが加わると、1万分の1秒ごとに1Aの割合でコイル電流が増大する。

 コイルは磁気の形でエネルギーを蓄積する。コイルの鉄心(コア)が飽和すると、それ以上のエネルギーを蓄積出来なくなる。飽和する電流値はコイルごとに決まっており、購入する場合は必ず確認せねばならない。
 昇圧チョッパーを設計する場合、コアが飽和する前にスイッチング素子をOFFにせねばならない。コイルの仕様とバッテリー電圧によるが、日常的なスペックの場合、連続して通電可能な時間は1万分の1秒のオーダーであることが多い。

 スイッチング素子は0秒でOFFになるものではない。ゼロではない有限の時間を経てOFFとなる。
 非常に短い時間単位で見れば、OFFになる途中ではスイッチング素子が抵抗R1に置き換わったとみなせる。スイッチング素子がOFFになるとは、R1の抵抗値が0から無限大に向かってどんどん増大することを意味する。

 コイルに流れていた電流は急には止まれない。インダクタンスの大きなコイルは電圧を掛けても徐々にしか電流が増大しないが、減少する場合も同じなのだ。コイルを流れる電流には慣性があるとイメージすれば、昇圧チョッパーあるいはコイルガン自体の挙動もイメージし易くなる。フライホイール・ダイオードという用語も理解出来るはずだ。

「逆起電力」なんてワケワカメな用語は忘れよう。

 さて、スイッチング素子がR1に置換してもコイル電流は強引に押し通ろうとする。何が起きるだろうか?
 オームの法則より、(電流)=(電圧)÷(抵抗値)である。抵抗値とその抵抗に加わる電圧が分かれば、抵抗を流れる電流値が決まる。ところが今の場合は電流値が与件なのだ。コイルを流れてしまった電流は急に止まれない。
 そこで、(電圧)=(電流)×(抵抗値)ということになる。R1の両端に電位差が発生するのだ。これが、サージの正体の1つです。

 この現象を理解しておかないと、コイルガンにおいて強大なサージに悩まされることにもなる。
 昇圧チョッパーとは、コイルが産み出すサージを積極的に利用して高電圧を発生させる装置なのだ。

 R1は無限大に向かって増大するため、R1に発生する電圧も増大する。
 それがC1の電圧を超えるとD1が導通し、C1が充電される。つまり、常にC1の電圧を僅かに上回る電圧で充電が行われる。これは、コンデンサーの充電においては理想的であり、結果として昇圧チョッパーは高効率のコンデンサー充電器となる。

 やがてR1は無限大すなわちOFFとなる。コイル電流も流れ去る。そこで再びスイッチング素子をONとする。
 以上の動作を毎秒1万回とか10万回とか繰り返す。

 理論的には昇圧チョッパーによって幾らでも高い電圧を発生させられる。しかし現実にはスイッチング素子がOFFになるのには時間が掛かる。
 R1の値は増大するが、コイル電流がR1を通過すればエネルギーが失われ、当然少しずつ電流値は小さくなる。R1の増大ペースが遅い・・・スイッチング素子のOFFに時間を要すると、電圧が十分に上がる前にコイル電流が減衰してしまう。
 また、D1の逆回復時間が長いと、せっかくC1を充電してもすぐに逆流して来てしまう。昇圧チョッパーにおいては、スイッチング素子を高速でOFFにすることと逆回復時間の短いダイオードの使用が重要である。

 

昇圧チョッパーの問題点

1)入力と出力が絶縁されていない
 突入電流の問題のほか、並列入力直列出力で出力電圧を稼ぐことも出来ない。しかしこれはまだ小さな問題である。

2)スイッチング素子への要求がシビア
 スイッチング素子には、入力側の低電圧大電流が流れる一方で、出力の高電圧に耐えねばならない。つまり、高耐圧大容量が求められる。低いバッテリー電圧でも効率を上げるには、更にON抵抗が低くなければならない。もちろんスイッチング速度は速くなければならない。
 すべてを備えたスーパースペックが要求される。結果として、非常に高価な素子が必要となる。

 昇圧チョッパーは簡単な構造で容易に製作可能。ただ唯一スイッチング素子だけは大変なコストが掛かる。ここでコストを落とすと性能が大幅に低下する。ストロボ用電解コンデンサーを充電する場合、お薦めは2SK3132である。実売価格は2000円。
 耐圧とON抵抗はそのままで、容量やサイズだけが数分の1な弟機種があると嬉しいのだが、皆無。それが痛い。大型のハイパワー充電器を製作する場合も、小型充電器を作る場合も、常に2SK3132しか選択出来ないのが最大の問題点である。

 1)と2)から導き出される結論は、余り高い電圧は発生させられないということ。実用になるのは400〜450Vまでであり、この方式によるコンデンサー充電器は事実上、電解コンデンサー専用である。

 

昇圧チョッパーの制御

 大抵の回路には突入電流が流れる。その主たる原因がコンデンサーであるのは周知の通り。
 これが、大容量コンデンサーの充電そのものが目的となると、突入電流なんてかわいいものではなく回路が短絡したのと殆ど変わらない状態になる。安直に解決するなら、抵抗を直列して充電する。しかしそれでは言うまでもなく性能が低下する。
 コンデンサー充電器は性能を追求すれば、出力が短絡した状態でも正常に動作せねばならないのだ。

 昇圧チョッパーでこれを実現するには、入力電流を制限するのが最も簡単である。また、充電対象のコンデンサーが所定の電圧に達したら充電を停止したい。
 これらの制御を行うには、専用ICを使うのが簡単である。ここでは、安くてポピュラーなMC34063を使用する。ただし最初に述べた、入力バッテリーがコンデンサーを直結充電する突入電流は防げない。電圧が低いためにそれほど長い時間は流れ続けない。330Vとかのコンデンサーがせいぜい5V程度に充電された時点で停止する。
 そこでこの際、目をつぶる。

回路図

 スーパースペックのパワーMOSFETはゲート容量が巨大である。そこで、ブースターとして小容量のチップFETのペアを使う。J186とK1334はON抵抗が数Ωもある代わりにゲート容量が小さく、容易にスイッチング出来る。これによりK3132のゲート電圧を強烈に振ることが可能となる。
 通常、ブリッジ型のブースターにはFETではなくトランジスターが使われる。FETを使うと、ゲート電圧が中途半端な瞬間にローサイドとハイサイドが同時にONとなり破滅するためである。ところが、J186とK1334はON抵抗が大きいために破滅しない。これらのFETはいいかげんに選んだのではない。短絡で破滅しない程度にON抵抗が大きく、K3132のゲートを駆動するには十分なほどON抵抗が小さい。そんなバランスを睨んで選定したのである。

 入力電流制限用の抵抗は0.15Ωとすることで、ピーク2Aとする。単三ニッケル水素電池の能力を考えると、負荷と性能のバランスが良いと思う。コア飽和電流5Aのコイルを使用した場合、バッテリーが元気ならピーク3Aでも動作可能。それを2Aで使うと信頼性がかなり向上する。
 入力平滑コンデンサーに耐圧10V品を使うと若干大型化するが、7.2Vラジコンバッテリーも使えるようになる。その場合、わざわざ別途で6.6V電源を用意する必要も無くなる。メインバッテリーとして7.2Vを使うラジコンに積む場合は、コンデンサー充電器の製作が楽になる。

 330V専用で考えれば、出力電圧モニターの分圧抵抗のGND側5.1KΩは無くても良い。
 コンデンサー充電が目的であれば出力平滑コンデンサーは不用だが、メインコンデンサーまでの配線を引き回すとインダクタンスが発生し、反応が悪くなる。0.1μF以下で良いから入れておくと、充電完了時の安定性が高くなる。

 パーツ点数が少ないため、ユニバーサル基板に組んで行く。
 自分の場合、基板中央から組み立てを始め、完成したところで基板の余った部分を切り取って仕上げる。

 まずは3番ピンのタイミングコンデンサー。5番ピンの出力電圧検出分圧抵抗の半固定10KΩを設置。
 2番ピンと4番ピンをGNDに引っ張る。半固定の足もGNDに引っ張る。

 手前に転がっているのは、J186とK1334を組み合わせたもの。ドレイン端子をまとめるジャンパーを取っ手代わりとして真っ先にハンダ付けする。足側のドレイン端子はラジオペンチで切り取っておく。

 ゲート端子から6.6Vにプルアップする小型の1/6ワット5.1KΩ抵抗を使って配線すれば楽。
 J186のソース端子に抵抗の足をハンダ付けするようにすれば、作業がかなり容易となる。

 ゲート端子をまとめたジャンパーは1番ピンに接続。
 5.1KΩ抵抗の足は6.6V補助電源に接続。

 補助電源の入力側GNDを接続・・・ 

 チョークコイルを取り付ける。

 トランスに比べるとコイルは調達が容易である。望むスペックの品が容易に買えるのであればトランスは優れているのだが、殆どの場合は手に入らない。レーザーのパーツよりもトランスを買う方が大変である!
 これは実際に「トランス難民」を経験せねば実感出来ないだろう。

 トランスは、手に入らない。

 電子工作は個人で行う場合、それを前提に設計すべきである。さもなければ、たまたま手に入ったトランスのスペックに設計の方を合わせるという本末転倒なことをやるしかない。
 ここで使っているコイルは、手に入りやすいコイルの中でも更に汎用扱いでどこにでも出回っている5A品である。

 足の1本はK3132と接続するため基板裏に通す。
 もう1本の足はMC34063の7番ピンを浮かせて、そこに接続する。

 4.8V系の配線を行う。
 電流制限抵抗は0.15Ωという値のものが売ってなかったので、0.3Ωを2本並列接続した。これを、7番ピン接続したコイル足にハンダ付けする。抵抗の反対側は基板に通す。
 赤い配線は、6.6V補助電源に4.8Vを供給する。

 基板裏側では、MC34063の6番ピンと8番ピンを4.8V電源に接続する。7番ピンを浮かせたので作業は容易。

 10KΩ半固定は、GNDと5番ピンの抵抗値が8KΩ程度になるよう調整しておく。

 基板裏にK3132を取り付ける。
 放熱板はドレインなので、端に高速ダイオードをハンダ付けして330V出力用としてある。
 更に、半固定から1MΩ×2を引っ張って、電圧検出。

 反対側には入力平滑用の1000μFを取り付けて、GNDと4.8Vの配線を仕上げる。

 この段階で出力に使い捨てカメラコンデンサーを接続して、動作を確認。280V以上にチャージされた。半固定を調整し、330Vまで上昇させる。

 

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