DPSSグリーン 黒共立モジュール

 

 共立電子が2005年早々に発売したレーザーモジュール。
 価格は高いが、性能からするとバーゲンだ。基板上のトリマーが回せないようにしてあり、そのままでは3ミリワット未満の低出力。しかし、トリマーを取り外してショートさせるだけでハイパワーになる。まるで、GT−Rを80馬力と称して売ってるかのよう(汗)

ファーストロット

 ヘッドと基板を分離して、携帯電話の緊急用外部バッテリーのケースに内蔵させた。スケルトンのレーザーポインターである★
 必要なパーツは秋葉原の千石電商だけで揃う。

 ニッケル水素電池3本に東芝の三端子レギュレータ TA48M03F をかまして3V安定化する。これで、電池切れの直前まで安定した明るさが出る。トリマーをショートさせたモジュールに思わぬ負担が加わらないための用心にも、電源の安定化は重要。
 また、安定化せず電池直結でマイクロジェットファンを駆動させ、強制空冷している。

 黒いレーザーヘッドの左が基板で、タップスイッチがケース外に露出している。
 右には三端子レギュレータのヒートシンク。その下にマイクロジェットファン。右にはチェーンが付いていた「取っ手」があるが、この出っ張りが非常に便利。手探りでもケースの向きが分かるため、ポケットの中で握っておき抜き撃ちでレーザーを飛ばすことが簡単に出来る。

 手探りに役立つ突起の周囲は、空気取り入れ穴が散在。握った時に出来るだけ塞がないよう注意せねばならない。マイクロジェットファンの尻(モーター)が見えている。
 モーターの甲高い回転音が、いかにもレーザーっぽい効果音になって、なかなか雰囲気が盛り上がる。

 射出口の脇には、空冷穴を3ミリドリルで開けてある。
 三端子の放熱は1センチ程度のヒートシンクで間に合う。黒共立モジュールの消費電流は400ミリアンペア程度(三端子の容量は500ミリアンペア)。

 レーザーポインターを作る場合、いかに小さくするか?に注力するパターンが多い。槍玉に上がるのがバッテリーで、出来るだけ小さな電池を使って本数も減らしがちだ。しかしハイパワーなレーザーの場合、ソレは駄目である。消費電力が大きいハイパワーレーザーには、しっかりした電源と放熱が不可欠である。

・十分な容量を持った余裕ある電源
・しっかりした発熱対策

 この2つがパワーアップ改造のキモである。単三電池を3本も使っているこのレーザーポインターだが、無理なく掌に収まる。
 ひたすら小さくしようとしなくても、これで十分小さい。そしてこの見た目からでは想像できない強烈な光線が飛び出す。

 集光していない状態で、フロッピーの磁気円盤を一瞬で貫通する!
 2つ目の貫通に少し時間が掛かっているのは、手ブレで照射位置が動いてるため。
 フロッピーは机の端に固定したが、デジカメは片手で持っておりもう片手でレーザーを動かしたので・・・

(mpeg 370 KB)

 こういうことが出来るためには、100ミリワット程度の光出力が必要。直射日光が当たった壁でも50メートル以上先からポイント可能。市販レーザーポインターの1000倍明るい。

 フロッピーの磁気円盤やVHSテープの裏側からレーザーを照射すると、ビームの形状が良く分かる。
 ↑のようにビームが円形をしているのがマトモなレーザーである。これが歪んでいたり楕円になった品質の悪いレーザーも低価格の製品には多い。楕円ビームではエネルギー密度が低下するので、貫通力も大きく低下する。
 ビームは中央の強度が一番大きい。そのため、100ミリワットクラスでは針の先で突いたような小さい穴が空く。ビーム直径の穴がズボっと空くのではない。

 モジュールの謎の黒い筒はアルミ製の薄い円筒である。
 LDのマウントに被さるように接着され、先端にコリメートレンズが付いている。ヒートシンク兼用になっている。
 余りに単純な構造でレーザーを集光しているため、ビームの広がりはかなり大きい。

 黒筒を外すと、LDのマウントと結晶のユニットが見える。
 先端に付いた四角のガラスは、赤外線カットフィルター。

 LDマウントからLDを取り外したところ。YAGレーザーを発振させるための結晶が緑に光って見える。
 LDは保護ケース無しの剥き出しタイプ。新共立モジュールとは異なりコリメートレンズを使わず、LDを結晶にギリギリまで接近させて励起。LDは出力光が大きく広がるが、超接近させることで広がる前に結晶にブチ当てる。

 LDの出力は300〜350ミリワットの品と思われる。

 LDマウントと結晶ユニットは接着剤でつながっているだけであり、位置の微調整機構は無い。
 エポキシ等で再接着しつつ自前で調整すれば、出力が最大となる位置関係に修正出来る可能性がある。
 しかしDPSSレーザーは調整が極めて微妙なので、事態を悪化させる可能性も高い。
 また、超絶ひ弱デバイスであるLDの破壊にも要注意だ。この状態で発振させると放熱も難しい。

 結晶は2ミリ角とこのクラスのモジュールとしてはかなり大きい。変換効率も高く、自作DPSSレーザーの結晶モジュールとしても有用。

 

セカンドロット

 セカンドロットはトリマーが回せるようになった上で、回さないよう注意書きが入っている。構造はファーストロットと同じに見える。
 ここでは、元の基板を使用せず励起用レーザーダイオードを直接ドライブする改造例を示そう。グリーンレーザーモジュール以外のパーツは千石電商@秋葉原で全部揃う。

 電源は単三ニッケル水素電池3本。
 スイッチ付きのケースは130円。

 レーザーポインター用スイッチは80円。
 三端子レギュレータの入力側+をスイッチする。
 バッテリーケースの赤コードをスイッチ端子の一方にハンダ付け。

 東芝の Low Drop 型3Vレギュレーターは100円。ドロップ0.5V以下、定格500ミリアンペア
 入力側に0.1μFのセラコン、出力側に47μFの電解コンデンサーを取り付ける。

 出力側+には電流制限抵抗2.4Ω(1.2Ω直列2本)を取り付ける。

 バッテリーケースの黒コードをGNDにハンダ付け。

 スイッチ端子のもう一方を三端子レギュレータの入力側+にハンダ付け。
 作業し易いようガムテープで仮止めしてある。

 黒共立モジュールから、オリジナルのLDドライバー基板を取り去ったところ。
 励起用LDの3本足が突き出している。このうち、筐体とくっついているのが+である。
 +端子を上にして、下に2つ並んでいるうちの左側が−である。

 右側はモニター用フォトダイオードだが、使わないので短く切ってある。

 GNDをLDの−端子に直結。
 三端子の3V出力は2.4Ωの抵抗を介してLDの+に接続。

 基本は定電圧+電流制限抵抗。黒共立モジュールを改造する場合、3Vと2.4Ωの組み合わせがかなりいい感じ。抵抗値の個体差があって若干変化するが450ミリアンペア前後流れる。一応共立では400ミリアンペア以内で使えと言ってるので、心配なら少し抵抗値を大きくしてみよう。

 この後、各パーツをバッテリーケースにエポキシあるいはホットボンドで接着するとか、適当な金属板を三端子等に放熱用に接着するとか、お好みのままに仕上げを行えば良い。なお、新共立モジュールでも全く同様に直接ドライブが可能であり、新共立の欠点である寝起きの悪さを解消可能。しかし、黒共立に比べると発熱が大きく、抵抗値を大きめにした方が良い(黒共立ほどの出力は出せない)。
 改造前提なら黒共立の方が快適。伊達に高価ではない。

 

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