SIGMA SD10 現像ソフト dcx3 |
開発目的
SDシリーズにはSPP (Sigma Photo Pro) という非常に使い易いソフトが付属しており、SDユーザーは全員が無料で使用可能です。したがって、SPPと同様のソフトを自作しても意味がありません。
dcx3は、SPPではうまく現像できないX3Fファイルを現像するためのものです。決して、SPPの代用として使うためのものではありません。SPPが現像に失敗するX3Fの多くは
dcx3 で救えますが、逆にSPPが問題なく現像出来るX3Fが dcx3 ではおかしくなることも結構あります。
しかし、dcx3 はあくまでSPPの補助であるから、SPPでちゃんと現像出来るX3Fは dcx3 で現像に失敗しても構わないと考えています。
dcx3は、西日が当たっていたりタングステン光源など色温度が低い状態で撮影されたX3Fの現像を得意とします。逆に、曇りや日陰など色温度が高い状態で撮影されたX3Fは苦手です。
レタッチソフトではない
![]() |
dcx3は現像のみを行うソフトであり、レタッチは別のソフトに任せます。 徹底的に素材性を重視し、必要に応じてハイライト・シャドウの切り詰めやトーンカーブ、コントラスト調整は別途行うという前提により、あらゆる情報を切り捨てずに取り込んで出力します。出力の無難さよりも情報を欠落させないことを最優先しているため、場合によっては見た目おかしな部分が発生することもあります。 |
制約
・Windows専用
Windows 2000 および XP で動作します。Vista でも恐らく動作しますが不明です。メモリーを食いまくるので
512MB 以上積んでいないと不安です。
重要な問題点として、96 DPI 専用です。120 DPI あるいはそれ以外の設定になっている場合、ダイアログ表示が不適切になるかもしれません。
・16ビット/チャンネル以上専用
あくまで現像ソフトであり、レタッチ用の素材を出力します。BMP出力も可能ですが、レタッチ耐性上の問題があります。
16ビット/チャンネルまたはそれ以上の精度でトーンカーブ調整等が行えるレタッチ用ソフトが別途必要です。
・SD10専用
SD9やSD14のX3Fも現像は可能ですが、自分はこれらを所有していないため、仕上がりの品質は不明です。
DP1のX3Fは圧縮形式が不明であるため、読めません。圧縮形式が公開されれば対応予定ですが、読めても色再現のチューイング等を行わねばならない可能性が高いため、対応は遅れると思われます。
x530(汗)への対応予定は、永久にありません。
・HI専用
最高解像度のみに対応します。MIDやLOWサイズは現像できません。
・sRGB専用
出力色空間はsRGBのみです。プロファイルの埋め込みも行われません。プロの道具としては使い物にならないですね 。
AdobeRGBがあったとしても、どっちみちプロが使える現像速度ではありません(汗)
SR現像
dcx3は名前の通り、有名なフリーのRAW現像ソフトdcrawを元にしたものです。
dcrawからフォビオン現像に関する部分だけを取り出して、大改造を行いました。
dcrawの現像法を大幅に改良し、色再現性のアップと暗部描写の改善を行いました。また、旧 dcx3 に存在した幾つかのバグを取りました。このdcraw改良部分を、「S現像」と呼んでいます。
これに、オリジナルの「R現像」を別に行い、2枚の画像を合成して出力しています。R現像はハイライトにおける色再現に特化した特殊な現像法であり、フォビオンの弱点として扱われて来た「飽和時の描写崩壊」をほぼ完璧に押さえ込みます。
その代償として、非常にノイズが多いです。
ノイズは少ないがハイライトの描写が信用できないS現像と、ノイズは多いがハイライトの描写が得意なR現像を合成する。そう、フジのハニカムSRですね (^_^;)
ハニカムSRになぞらえて、SR現像と称しています。
これにより、暗部ノイズはともかくとして、ダイナミックレンジに関してはフォビオン本来の性能をフルに引き出します。X3Fファイルによっては、センサーがフォビオンSRとでも呼べるものに変わったかのような仕上がりが得られます。
内部処理は極めて複雑であり、結果として現像時間は非常に長くなっています。非力なパソコンでは使い物にならないです (^_^;)
ダウンロードはこちら (767 KB)
使い方
インストールという作業は不用です。好きな場所に置いて実行して下さい。設定などはレジストリーではなく
ini ファイルに保存するため、削除する時も後腐れありません。
X3Fファイルを読み込む方法は3通りです。
・ファイル(F) メニューの開く(O)... から指定する。
・Window にドラッグ&ドロップ (ただし1枚のみ有効)。
・拡張子X3Fに関連付けしておく。
なお、オプション(O) がメニューにありますが、飾りです。現バージョンでは中身は無いし選択も出来ません。
ついでに、作者の趣味により終了確認はいかなる場合も行いません。ご注意下さい。
X3Fファイルを読み込むと、色分離計算を行わないナマの状態を表示します。これが
FOVEON の素の画像です。非常に色が薄いことが分かります。
また、白トビしている部分も分かります。SPPの場合は、実際には白トビしていない部分を白トビしているかのように表示することもありますが、dcx3
では本当に白トビしているかどうかの判断が可能です。
これはホワイトバランスや色分離計算を行わないため、比較的高速に表示されます。手持ちのX3Fのピントだけなら手早く確認することが可能です。
表示倍率は25%から800%まで6段階に切り替えできます。
現像(C)... メニューを選択すると、ホワイトバランス設定画面が開きます。
SPPの大きな問題点は、ホワイトバランスの調整機能が貧弱なことです。FOVEON
のホワイトバランスは極めて微妙であり、僅かな調整で仕上がりが大きく変化します。それなのに一般的なベイヤー方式でもありふれた数種類のプリセット値を選ぶかオートにするしかありません。SPPのスポイト機能は、現像後のRGBバランスを調整するだけです。
dcx3 では、プレビュー画像をクリックすると、クリック点がグレーに近付くよう「ホワイトバランスを」調整します。画面全体で調整することも可能です。これらの機能はしばしばとんでもないホワイトバランスにしてくれますが、UNDO
と REDO 機能で補助。更にホワイトバランスの設定値をファイルに保存しておくことも出来ます。
FOVEON におけるホワイトバランスの調整は、RGBではありません。上中下です。
原理図ではRGBが縦に3層になっているかのように示されますが、実際には上中下がRGBに対応している訳ではなく、複雑な関係にあります。
dcx3 では赤と青のスライドバーでホワイトバランスを調整しますが、厳密には赤や青ではありません。ただし、実用上は赤および青と考えておいて構いません。
一番下のスライドバーは Nikon のDライトニングのような機能です。輝度のみトーンカーブを持ち上げたり下げたりします。dcx3 では最終仕上げとして外部のソフトでトーンカーブを持ち上げることが多いため、Dライトニングを効かせ過ぎないよう注意が必要です。
ホワイトバランスは赤と青の両方を1に設定した状態が「晴天」に相当します。ホワイトバランスがおかしくなり過ぎて訳分からなくなったら、一度両方に1を入力して「設定」してみましょう。
赤のスライドバーを右に移動させると、赤の増大と緑の減少が同時に起こります(正確には、下層の増大と中層の減少)。
青のスライドバーを右に移動させると、青の増大と緑の減少が同時に起こります(正確には、上層の増大と中層の減少)。
赤のスライドバーを左に移動させ、同時に青のスライドバーを右に移動させると、色温度が下がります。
赤のスライドバーを右に移動させ、同時に青のスライドバーを左に移動させると、色温度が上がります。
厳密に言えば色温度の変化と完全には対応していませんが、ほぼ対応しているとみなして操作出来ます。
赤と青のスライドバーを両方とも左に移動させると、マゼンタかぶりを除去出来ます。
赤と青のスライドバーを両方とも右に移動させると、グリーンかぶりを除去出来ます。
ホワイトバランスの調整が完了したら、「現像」ボタンを押して現像します。
ファイル(F) メニューの中にある保存(S)... を選んで現像結果を保存します。
保存形式は4通りに対応しており、保存形式設定... で設定しておきます。また、BMP による保存はそれらと独立に可能です。
dcx3 にはシャープネスという概念が存在しません。現像は常にシャープネス無しで行われます。必要であれば、外部のレタッチソフトで掛けて下さい。